「コミュかる」は、「コミュニケーション」と「カルチャー」を用いた造語で、2012年に創刊した杉並区の文化・芸術情報紙です（年4回発行）。区内での公演・チケット情報や文化人のインタビューをご紹介しています。
本コーナーでは紙面には掲載しきれなかった写真や「こぼれ話」を掲載しています。

令和５年度杉並区文化芸術活動助成金採択団体　小心ズ　ヤノミさん

2024年3月21日発行「コミュかるＶＯＬ.66」

Q１：どの演目も大変個性的な主人公が登場されますが、最初にキャラクターを考えるのでしょうか？ 物語に合わせたキャラクター造形なのでしょうか？

演目によって違いますが、例えば『ミスしゃっくりの幸せな一日（以下、ミスしゃっくり）』で言えば、キャラクターが先です。人間はしゃっくり、げっぷ、おならなど色々な音を出しますが、大人になるとお酒を飲む以外でしゃっくりって出ませんよね。でも一日中しゃっくりをしている人がいたらおもしろいな、というところから考えました。

『The Gardener』は、手遣い、棒遣い、糸操りなど複数の人形を取り入れた人形劇を作ってみたい、というところから出発しました。小心ズは結成時からボーダレスということをすごく大事にしています。国境、世代、性別、人種、宗教、格差などあらゆるボーダーを取り払う、越えていくことが願いなので、人形劇も様々な人形達が共存している世界を表現したかったんです。人形は全て私の手作りで、一年くらい掛かりました。

『新郎新婦の入場です！』は、結婚式の司会を今でもやっているんですが、毎回おもしろいことが起こるんです。それをメモしておいて作り上げました。結婚式に参列した方であれば多くの方が思い当たるエピソードばかりなので、間違いなく受けますね。

Q２：杉並演劇祭において2022年に大賞、2023年は優秀賞と２年連続で受賞されています。反響や感想を聞かせてください。

私はそれまで海外では色々な賞をいただいていたんですが、国内ではそれが初めてだったので、すごくうれしかったですね。ただ残念なのはコロナ禍でしたから、授賞式はなく、郵送でトロフィーと賞状が届いたで、今一つ実感に欠けましたね（笑）。昨年も授賞式はありませんでしたが、実行委員長が直々にトロフィーを近所の喫茶店まで持って来てくださったんです。まさか実行委員長自らが足を運んで直々に授与してくださるとは思ってもいなかったので驚愕してしまいました。

東京に出てきて初めて住んだ町が杉並区でした。だから杉並演劇祭で賞をいただけたことは感慨深いですね。

Q３：小学生から中学生以上を対象としたワークショップをやられていますが、子どもたちはどんな体験ができるのでしょうか？

大きく分けて２種類のコメディをやってもらいます。一つは、小学生以下を対象とした、言葉を使わないフィジカル・コメディ。小道具一つだけを使ってコメディを作ります。これは人前でしゃべらなくてもよいので、2歳のお子さんにもできます。例えば手ぬぐいを使ってそれが何に見えるかから始めます。頭に巻いてみると「女のひとだ」「お姫様だ」という反応があり、折りたたんで羽ばたかせると蝶に見えたり。客席は我先に言い当てたいので大変盛り上がります。演者は自分の動きをみんなが集中して見てくれるので、がんばるんです。客席も自分の番が来たらもっとおもしろくできるぞと更にがんばって、段々とストーリー性のあるコメディになっていくんです。ごっこ遊びと同じで、誰かになってみたい、演じてみたいというのは、誰でも本能的に持っているものだから、すんなりできちゃうんですよね。

もう一つは中高生以上を対象にした話芸、スタンダップ・コメディ。最初は人前で自己紹介するところから始めます。例えば「初めましてヤノミと言います。体の８０%はビールで出来ています」と言うと、笑ってくれるし、ビールが好きな人として名前以外の情報も覚えてもらえますよね。このように、自分の名前の由来や好きなものについて何か情報を足してください、というところから始めて、徐々に笑いの要素を入れていきます。

フィジカル・コメディとスタンダップ・コメディに共通してみんなにお願いしているのは、自分が発表するときよりも、他の人が何をやるか、どんなことをしゃべるのかをよく見て、聞いてください。と言っています。これは私がシルク・ドゥ・ソレイユのオーディションを受けたときに、ディレクターが「みなさんにお願いがあります。それはいい観客でいてください。」と言われ、今でもその言葉を大事にしています。