「コミュかる」は、「コミュニケーション」と「カルチャー」を用いた造語で、2012年に創刊した杉並区の文化・芸術情報紙です(年4回発行)。区内での公演・チケット情報や文化人のインタビューをご紹介しています。
本コーナーでは紙面には掲載しきれなかった写真や「こぼれ話」を掲載しています。
作曲家 福島弘和さん(ふくしまひろかず)
2022年12月21日発行「コミュかるVOL.61」
区制施行90周年記念事業の一つとして、記念曲の交響詩≪鼓吹の桜≫を作曲した福島弘和さん。作曲家としての歩みを吹奏楽版≪鼓吹の桜≫を演奏した都立杉並高等学校吹奏楽部のみなさんと一緒にお話を伺いました。
Q1: 作曲をされるときはどのように作られるのでしょうか?最初にメロディーから作っていくのでしょうか?
ちょっと感覚的な話になってしまいますが、自分の場合は、一種のパズルとして考えています。例えば、ドレミという音を埋めたら次のマス目に合う音をはめ込んでみる。それが合うか、合わないかを積み重ねていって、徐々に全体像が見えてくる、そんな感じでしょうか。
Q2: 曲のイメージやアイデアはどんなところから生まれてくるのでしょうか?
アイデアは、自分が小学生から聴いてきたあらゆる音楽が元のアイデアですね(笑)。100年以上も聴かれている名曲、偉大な先輩方が作った曲を自分というフィルターを通して蓄積されたものがアイデアになっていると思います。全て自分で考えて作り出したというよりは、そうして蓄積されたものが今度は自分というフィルターを通して出てくる、といった感じです。
Q3: 特に影響を受けた作曲家の方はいますか?
数え上げたらキリはありませんが、日本人で一番影響を受けたのは林光先生です。もう亡くなられた方ですが、演奏会があると聞けば遠方でも行きましたね。現代音楽の多くはドレミと言った音階にとらわれない、不規則でちょっと難しい音楽が多いのですが、林先生の作る音楽はこれと対照的で、専門的に言うと調性音楽の部類に入るのですが、簡単に言うと調性がとれてメロディックでそれでいて新しさ感じられる音楽ですね。今回の≪鼓吹の桜≫もなにかしらの影響は出ていると思いますね。
Q4: 杉並区は、原水爆禁止署名運動を最初におこなった区で、第五福竜丸とも縁があると思います。福島さんの代表作のひとつ「ラッキードラゴン〜第五福竜丸の記憶~」はどのようなきっかけで作られたのでしょうか?
絵本画家のいわさきちひろさんの美術館に行ったとき、売店でいろいろな画集がありまして、その中にアメリカのベン・シャーンさんという版画作家の絵本があったんです。この本は、1954年にビキニ環礁で行われたアメリカによる水爆実験の模様に詩人のアーサー・ビナードさんが詩を付けた絵本なんですが、実験にかかわった科学者は第五福竜丸が被爆した事実を早く忘れてほしい、忘れてくれれば実験や研究が堂々とできるというような意味が含まれていると感じました。そのとき、こうしたことは忘れさせてはいけないと思ったんですね。自分は音楽家なので自分にできることは何だろうと考えたときに、自分が作った曲が全国大会で使用されれば、多くの人にこの事実を届けることができるのでは、と考えました。この本と出会って5年、密かに委嘱の話を待っていました。そうしたところ、当時、春日部共栄高等学校吹奏楽部の顧問をされていた都賀承太郎先生から委嘱のお話をいただいたんです。都賀先生は廃棄処分されそうな第五福竜丸の保存運動もされていた方だったので、すっかり意気投合しましてね。そうしたきっかけで生まれたのが「ラッキードラゴン」なんです。
Q5: ≪鼓吹の桜≫は、「テイク・ファイヴ」をモチーフにされたと伺っていますが、数あるジャズの曲の中からなぜ「テイク・ファイヴ」を選ばれたのでしょうか?
私はそれほどジャズに詳しくないのですが、「テイク・ファイヴ」は珍しい5拍子の曲なので、阿波おどりと合うと思ったんです。演奏する方も聴く方も、きっとおもしろいと感じてくれると思ってこの曲を選びました。
「コミュかる」は以下の杉並区役所公式ホームページでお読みいただけます。
https://www.city.suginami.tokyo.jp/kusei/bunka/johoshi/1073859.html