スギナミ ウェブ ミュージアム

企画展:阿佐ヶ谷住宅の記憶展

特別寄稿

今井哲也

阿佐ヶ谷住宅のおもしろいところは、敷地内のどこからどの方向を見るかによってまったく違った絵になるところです。それはつまり散歩コースとして非常に優秀ということであり、もちろんこの空間のなかに住んだらとても楽しいんだろうなということでもあります。

2010年頃、ぼくは団地を舞台にしたSF漫画のアイデアを練っていて、モデルになる場所を探すために都内に古くからある団地をいくつも巡っていたのですが、ここはなんかすごくいいな、と思ったのを覚えています。あとから調べたらこの「いいな」が完全に設計者の意図通りのもので、あえて道をカーブさせたり、建物同士を少し角度をつけて斜めに配置したりすることで、歩くにつれて見える風景がどんどん変化するように、狙ってそう作ったということでした。

そのとき阿佐ヶ谷住宅を舞台のモデルにして描いた漫画は今年映画化されることになったのですが(大変ありがたいことです)、この作品がここまでたくさんの方に愛されるものになったのも、まちがいなく、この阿佐ヶ谷住宅という空間に巧みに仕組まれた「よさ」に負うところが大きいと思います。

今井哲也 プロフィール

月刊アフタヌーン(講談社)主宰の新人賞「アフタヌーン四季賞」2005年冬のコンテストで投稿作『トラベラー』が四季大賞を受賞。2008年『ハックス!』(全4巻)にて連載デビュー、2011年『ぼくらのよあけ』(全2巻)連載。
『アリスと蔵六』(徳間書店)はアニメ化され、第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞。

関連情報

「頼みがある。私が宇宙に帰るのを手伝ってもらえないだろうか?」

1万2000年をかけて地球に来た“未知なる存在” と子どもたちの極秘ミッションが今、始まる

2022年10月全国公開

原作:今井哲也「ぼくらのよあけ」(講談社「月刊アフタヌーン」刊)
監督:黒川智之
脚本:佐藤 大
アニメーションキャラクター原案・コンセプトデザイン:pomodorosa
アニメーションキャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
音楽:横山 克
アニメーション制作:ゼロジー
配給:ギャガ/エイベックス・ピクチャーズ
製作:2022「ぼくらのよあけ」製作委員会

【CAST】

杉咲 花(沢渡悠真役)
悠木 碧(ナナコ役)
藤原夏海(岸 真悟役)
岡本信彦(田所銀之介役)
水瀬いのり(河合花香役)
戸松 遥(岸 わこ役)
二月の黎明号(CV:朴 璐美)
ほか

公式ウェブサイト:bokuranoyoake.com

Ⓒ今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会